院生


王 芷漪 Wang Zhiyi

 

論文:『アイヌ民族とカムイの相互関係を表現する作品のための描画研究』

 

 本研究では、アイヌ民族の精神世界を研究する上、アイヌ民族と信仰(カムイ)の相互関係を表現する作品を制作した。

 

 日本唯一の少数民族―アイヌ、彼らは独自の文化と言語を有する。狩猟採集民族であるため、自然を崇拝する信仰と生命観を持っている。彼らはこの世のあらゆるものに魂が宿っていると考えた。そして、動物や植物、山や川などの自然物の他に、人間が作った道具をもカムイ(神)と考えている。したがって、アイヌ人にとって、動物の肉と皮を手に入れることや植物を収穫することなどは、カムイがもたらした賜物である。それに対して、人間からは感謝の祈りを捧げる。いわば、人間と自然のお互いの共生関係である。

 

 自然を崇拝しているアイヌ民族とカムイ、双方からの感謝の気持ちを表現し、鑑賞者のアイヌ文化に対する理解を深め、人間と動物、環境への想いを呼び覚ます。

 作品を創る過程で自分の絵のスキルとセンスを向上し、アイヌ文化への理解を深める。

 

作品:『カムイ』

 アイヌ人の生活と繋がっている五つ動物(カムイ)のテーマに基づいて、綿布または麻布を用いた。アイヌ民族に於いて多用される四つの色(紺、赤、黒、白)を主体とした綿布と麻布を支持体として、これにアクリル絵の具を使用して絵を描く。更に、鹿の角、綿糸、動物の毛皮などアイヌ民族に関係が深いものを使用してアイヌの文化の一端の表現の試みを創出する。


張 琪 Zhang  Qi

 

論文:『日中の伝統鶴模様の比較研究とグラフィックアートへの応用ー日本平安時代向鶴菱と中国唐時代雲鶴紋の比較ー』

 

 日中において、鶴は縁起の良い生き物として、古来より、様々な模様に取り入れられてきた。

 鶴模様は、昔の人々の暮らしの状況を体現した伝統芸術の一つである。永きに渡り、生活や文化の時代変化とともに変容し、時代に適応してきた。

 昔の職人にとって、彼らは陶磁器や服飾、或いは絵画のような媒体を通じて、芸術的構成要素として鶴模様を使い、生活文化を記録し表現してきた。

 鶴模様の現代における応用について考察すると、伝統を継承しつつ、現状に沿いながら、その魅力を大々的に広めることができるはずである。

 しかし、鶴模様は現代の芸術作品の中で広く活用されていない。筆者は本研究を通して、伝統文化と現代文化を融合させ、伝統的な鶴模様から新たなグラフィックアートを創出する。伝統的な絵柄の魅力をより多くの人に再び認識させることを目的とする。

 

作品:『鶴』

  鶴模様は伝統的な芸術の要素として、 現代の芸術作品の中で広く活用されているやり方は、あまり伝承されていない。今はデジタルの時代ですが、筆者は伝統的な絵柄の魅力をより多くの人に再び認識させたいと考え、このグラフィックアートを作った。

 


丁雨沁  Ding Yuqin

 

論文:『中国の食文化と、その地域性のビジュアル化に関する研究』

 

 中国は広大である。東西南北の文化は異なり、それゆえ、食文化も豊かである。筆者は異なる地域の食文化に興味があり、食べ物の発展史と地域文化を通じて、人々に愛される食文化を知ることは興味深いことだと考える。そして、その食べ物が生まれた地域の歴史と文化を知ることも興味深い。

 本研究では、中国の異なる地域の代表的な郷土食から題材を選び、作品を完成したいと思う。日本と中国は共にアジアの国であり、食文化に共通点があることは勿論であるが、異なる部分も多い。このことから、中国の様々な地域の食文化を研究したい。さらに、食べ物の歴史を知ることで、様々な食文化も理解できるようになる。

 

作品:『中国食文化グラフィックアート』

 中国各地域の食文化を表現するため、中国の異なる地域の代表的な郷土食から題材を選び、クレヨンで縦型の長いグラフィックアートを作った。


余 舟唱晩 Yu Zhouchangwan

 

論文:『絵本における動物のキャラクターデザインに関する研究』

 

 この絵本の物語では、一貫してキャラクターが重要な役割を担う。キャラクターは、絵本の内容に対する感受性に影響を与えている。キャラクターデザイン理論には、概念設計、視覚伝達設計、色彩構成などに関する知識が含まれている。理論的な指導に基づいた芸術創作は明確で、絵本の児童に対する魅力、啓発性が高められる。筆者はキャラクターデザインの研究に基づき、親子関係を深め、構築することを目的とした絵本創作をを目指した。その為に、発達心理学などを応用し、子供の年齢に応じたキャラクターを作り、絵本を創作した。

 

作品:『わたしの母は病気になる』

 動物のキャラクターデザインを通じて、うつ病とは何かを子供たちに説明する。性格の特徴が鮮明な動物キャラクターを通じることにより、うつ病の内容を理解することが容易になる。


呂 筱筠 Lyu Xiaoyun

 

論文:『果物のダブルイメージのイラストレーション作品の制作』

 

 本研究では、果物や野菜を切断する等した時に現れる特殊な形に着目し、その特殊な形をほかの事物と合わせることにより表出する感情や思考を表現する。イラスト制作を通し、果物の特殊な形から、一つのもののイメージを別のものに持ち込こみ、「形」に生命力を注ぐことを試みた。

 ありふられた食物にも「生命力があふれている」ということを、より直感的に伝えたいと考えている。作品の美しさだけを提示するのではなく、果物や野菜の生命力を表現することを心がける。多くの制作素材は日常生活の中に於いてありふれた果物や野菜であるが、新しい視点から作品化し、伝統的な表現力を覆すことが筆者の制作の目的である。

 

作品:『りんごとコブクロ』

 “りんごの芯と種”と“コブクロ”のダブルイメージ。新しい生命を孕む意味。動的表現で水面の流動的なイメージを表現この作品を通し、野菜の持つ新しい楽しさを人々に広く伝え、身近なものに対する認識と関心を呼び起こしたいと考える。擬人化の面白さを表現した。